2023年9月中旬、我々ソトアソビ部は下田の爪木崎で合宿を行った。ビラ小沢という貸別荘を借りて、食事は部員で自炊する計画だ。
自炊には海から材料を調達してくることも含まれているが、用心深い我々はボウズの可能性も考えて、各自の自宅であまっている食材を大量に持ち込んだ。
ピザ焼き体験
さらに初日の夜はピザ焼き体験を申し込んでおいた。貸別荘側がピザの材料を用意してくれるので、手で生地をこねて伸ばし、われわれのオリジナルピザを作るのだ。
釜の火の扱いやピザの窯入れは貸別荘の管理人がやってくれる。
ビラ小沢にはブロック積みの大きな釜があるのだが、あいにく故障中だったようで、今回は小さな金属製の釜を使った。
小さな釜なので火力調整が難しいのか、ピザ焼きに慣れている様子の管理人さんも手こずっていた。
少し焦げてしまったが、アウトドア料理では焦げるとなぜかテンションが上がる。おいしくいただいた。
カラスウリの花
翌朝になって近所を散策していると、植物レーダーの発達した部員が「カラスウリの花があった!」と興奮している。
白くてひょろひょろしているのがカラスウリの花だというのだが、閉じているときのアサガオより頼りない感じで、私にはしおれて枯れかかってる花にしか見えない。
しかし夜になると、このしおれた白いやつが開いて、とても綺麗な花になるというのだ。
にわかには信じがたいが、暗くなってからまた見に来ようということになった。
我々は海に潜ったり、近所の猫と戯れたり、女郎蜘蛛に話しかけたりしながら夜を待った。
なお、海での食材調達は狩猟採集民のS先生が行ったが、驚くほど大漁だった。焼いたり煮たり刺し身にして堪能した。日本が何かの危機に陥ってサバイバル状態になったらS先生に付いていきたいと思った。
そして、夜10時を過ぎたころ、カラスウリの様子を伺いに行くと・・・
なんじゃこりゃ!
これまで見たことのない形の花が咲いている。とても美しいのだが、とても異様だ。トケイソウのように「やりすぎデザイン」に見える。昼間、カラスウリの花を見つけて興奮していた部員の気持ちが私にもわかった。
ちなみにカラスウリが夜だけ咲くのは、夜行性の蛾に花粉を運んでもらうためらしい。
興奮冷めやらぬソトアソビ部員たちは、そのまま夜の海へと向かった。
今日は新月で月明かりがないので、たくさんの星がみえるだろう。
昼間は海水浴客で賑わっていた爪木崎海岸は、夜10時を過ぎた今は人の気配も明かりもなく、波の音だけが聴こえた。我々は真っ暗闇の砂浜で、夜空の星を堪能した。
スナガニ
ところで、海へ来たら生き物を探さずにはいられないソトアソビ部員は、砂浜を走り回っているスナガニを見逃さなかった。
スナガニは体は小さいがとんでもないスピードで走り回って、さらにすぐに巣穴に隠れてしまうので、見つけたとしても捕まえるのは難しい。
しかしソトアソビ部にはスナガニ捕獲を得意とする部員がいて、あっというまに捕まえた。
いつもながらその手腕には感心する。
我々はさらに生き物を求めて岩場に向かった。
岩場にはたくさんのカニがいた。カニは基本的に夜行性のようで、うようよと歩いている。スナガニと違って捕まえるのは簡単だ。
脱皮直後のカニ集団
そのとき部員の一人が、潮溜まりで脱皮しているカニに気づいた。周りを見ると、そこらじゅうの潮溜まりに脱皮した直後の白いカニがいるではないか。
カニは満月や新月に脱皮するという言い伝えがあるそうだが、それは科学的根拠のない迷信だとされているらしい。
だが、こうして新月の夜にカニが集団で脱皮している様子を実際に目の当たりにすると、何かしら科学的根拠があるのではないかと思えてくる。
脱皮直後のカニを指でつついてみると、やわらかくぷよぷよしていて新鮮な感じだ。
潮溜まりで脱皮していたカニ集団は、生粋の狩猟採集民であるS先生にすべて捕まってしまった。
おいしくいただきました
ソトアソビ部の下田合宿は、カラスウリの花や集団脱皮するカニといった思いがけない出会いがあり、楽しい思い出となった。おしまい。
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